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平成23年度心身障害児等の療育に関する研究助成報告概要

平成23年度心身障害児等の療育に関する研究助成報告概要
心身障害児総合医療療育センター研究報告書

心身障害児総合医療療育センター
所長   君塚 葵

平成23年度の心身障害児総合医療療育センター研究報告書をお届けします。これは視覚障害者用図書事業等委託によるもので、現場に直結した日常での活動からの各部門による6つの研究報告です。障害の一元化、身近なところでの社会資源の利用がめざされている中で、各報告の概要をまとめました。本報告が少しでも皆様に役立つものとなることを願っています。

1.「障害を持つ子どもの聴覚評価と補聴器装着指導(聴覚補償)のあり方に関する検討-他院耳鼻科でフォローされながら当センターに紹介されたケースの各種条件の検討と辞令的考察」

言語聴覚科 田中伸二

障害児聴覚を専攻する耳鼻科医と言語聴覚士とが連携しており、受診児は聴覚障害以外の障害をほぼ全例が持っている。平成23年4月から12月までの9ヶ月間の21例のうち、耳鼻科等から紹介された7名を対象としている。うち6名が4歳までに紹介されている。

前医でのAuditory Brainstem Response(ABR),Auditory Steady-State evoked Response,Distortion Product Otoacoustic Emissions さらには、自覚的行動聴力検査項目に関する検査回数などを調査している。そして、補聴器の処方、補聴器装用指導さらには発達ガイダンスを含む発達評価がなされていたか、保護者の訴えたニーズを検討している。これらの検査の多くを当センターで行い、両者の比較を行っている。

保護者の主訴は、聴覚評価と補聴器装用指導が多く、難聴が信じられない1例、言葉の後れの原因を知りたいが1例であった。両者の検査が一致していたのは、ほぼ一致を含めて3例であり、2例は不一致、2例は比較不能であった。聴力閾値が確定したのは、4例で1例は正常の可能性があり、補聴器装着を中止している。

補聴器試用の効果を検討し、発達ガイダンスを行っている。そして綿密な辞令検討を掲載してる。

2.「かむ」という常同行為が及ぼす介護上の問題と行動軽減の役立つ環境設定
- 精神発達障害児2症例の報告 -

医務部リハ室作業療法科 佐々木清子 久保田麻子 中村泰子
看護指導部指導科    根城由紀子 三上ひかり

精神発達の遅れのある子どもで、手にした殆どのものを口に入れてかむ行動は、危険や介護での負担につながるが、その程度は負担や生活上での制限となるかについて、介護者への困ることや注意していることなどを含めてのインタビュウーや介入前後でのビデオ記録の比較を通して検討している。その上で手の操作性の向上につなげるための玩具などの工夫による介入について検討している。

1例は発声はあるが発語はなく、快不快は笑顔や泣くことで表現する。傾眠傾向があり、音楽、かむことで覚醒が高まる。がんぐを5種類への反応は玩具によってかむ回数や遊ぶ時間に違いが見られている。椅子、机をもかむので、これらにも工夫をしている。その結果、効果・今後の課題を確認できている。

2例目でも覚醒状態が低く移動できないが、近くにきた人をかんだり、自分の手をくわえていることが多く手袋を使ったりしている。介入により、かむ回数の減少が明かというわけではなかったが、遊びの時間が増えることを含めて、一定の効果を得ている。

さらに、吸収促進法を種々に検討している。温湿布・メタン湿布では2時間意向に血流の上昇が確認された。超音波照射では、局所の温度の上昇をみずに、血流の増加が確認されている。

静脈内投与の代替として、皮下投与が有用であることが推察されたが、苦痛を与えない範囲では、両者の併用が適当であると予想された。

3.療育機関における保育スタッフに求められる研修内容
-演習体験を取り入れる意義-

指 導 科  栗原美和 中島尚美
臨床心理科 荒木千鶴子
通 園 科  三浦幸子

当センターでは、国の委託を受け全国の関連施設のスタッフの専門性を向上する研修を長年継続しており、毎年1,000名を超える参加者が種々の講習会に出席している。幼児通園療育職員への講習は5日間で、保育の総論・各論、医学看護、リハビリテーション、心理などの講義と共に、演習体験を組み入れている。最近3年間の出席者へのアンケートを通して、その内容を紹介すると共に、研修生のニーズ、演習の意義などに検討を加えている。

重度な障害をもった利用児への具体的な対応、保育本来の集団を活かした継続的かかわりをいかに形成するかなどの課題を、テーマ別討議やレパートリーを広げる演習を通して共有し、スタッフの役割機能に焦点をあてるようにするなどの講習会の工夫がなされ、全国に子ども発達支援と保護者支援としての専門性を高める機能を果たしている。

4.痙直型両麻痺児を含む肢体不自由児施設の心理臨床

臨床心理科  三浦幸子 三間直子

児童福祉法において、肢体不自由児施設に心理職の必要性が銘記されていないが、実態はそうではなく、家族関係の問題が複雑に絡み合っており、心理臨床的課題を明らかにする必要があり、それを目的に、当センターに在籍した54名の入所児を対象に、生活状況・心理臨床的課題に焦点をあてた研究をおこなっている。

対象は脳性麻痺、脳症・脳炎後遺症、虐待を含む頭部外傷後遺症が全体の85%を占め、入園理由として最も多いのがネグレクトを含めた虐待(43%)であり、ついでひとり親(28%)、養育困難(24%)出会った。入園児年齢で最多は3歳台であり、在園年数は4年をピークに平均9年と成っている。重度な知的障害を併せもっている子どもが50%であった。スタ風は看護師18名、保育士・指導員が6名であり、勤務年数が最多なのは2~3年であり、半数が配置換えや退職で病棟を去っている。

病棟看護責任者と指導責任者に、54名の児それぞれにおいて、あらかじめ作成した10項目の課題について適否を挙げてもらっている。10項目のうち最多なものが保護者への支援74%、精神発達の支援63%、情緒不安定・神経鞘上への対応59%などが上位を占めている。

心理臨床課題として、子どもについては脳機能や身体運動にかかわる発達経験、感情の表現やコントロール、認知特性、思春期の心性について、考えを整理している。保護者の課題としては、精神的支援、障害の受容に関しの課題を展開している。最後に肢体不自由児施設における心理学的視点の必要性を述べ、個別と集団の技法の要点に及んでいる。

5.摂食拒否がみられる障害児の経管栄養から経口摂取への移行援助
-応用行動分析的手法を用いた摂食援助を試みて-

看護科 藤井恵未 大久保嘉子 柳田清香

これは日本看護学会論文集のひとつとして、小児看護(2012年)に掲載されたものである。基本的に摂食機能に異常がないのに、口蓋裂・気管軟化症のため長期に経管栄養をしてきたため、心理的なことから経管栄養を離脱できなかった児であり、応用行動分析的手法で行動を変容させ、経口摂取に移行できた症例報告である。対象は3歳の女児で大島分類2で、ネグレクトを疑われた療育困難例である。

具体的な内容として三期に分け、第一期は環境調整とし無理強いはしないで、様々な食物の摂取でなめる程度を目標とする。第2期では子どもの欲求を叶えて、基本的信頼関係の形成を焦点とし、嫌がりながらも少し受け入れるあるいは拒否の軽減など子どもの反応に応じて進める。そして好ましい行動の強化として、誉める、好む味による摂取を進める。つまり好ましい行動の強化である。これは食事場面に限ったものではないことである。第3期は拒否に対応せずに落ち着くのを待って、受入を促す。特に信頼関係・愛着関係を促すことを重視している。

このような基本的な応用行動分析手法が本例に効果を発揮したもの考えていた。

6.小児整形外科領域における超音波検査の利用

整形外科    伊藤順一、君塚葵

超音波検査機能の向上にともなって、その利用が関節リウマチを始めとして整形外科分野でも拡大している。今回、小児の股関節疾患の診断に超音波検査が使用できるかを検討している。

日立アロカメデイカル社製のProsound α7を用いて、(1)ペルテス病・単純性股関節炎を対象に、関節内水腫、滑膜増殖、血流増加を検査し、さらに(2)先天性股関節脱臼のリーメンビューゲル装具による征服された例で骨頭の位置についての研究を行っている。

ペルテス病例において、パワードプラ法での報告はないと考えられ、それでは関節水腫が確認できたが、血流シグナルは条件を変えても拾えなかった。これは血流速度の大きさなどのためかと思われ、さらに検討が必要とされた。

先天性股関節脱臼では、1歳未満であれば両側股関節の描写が可能で、健側との比較が可能であった。探触子の種類・大きさが小児用に適した者の開発が望まれるとしている。

小児の股関節において、簡便さ・負担の軽さなどからMRIにかわるものとなりうる報告している。

7.脚延長の創外固定患児への生活支援

1病 看護師  木下千栄 水沼ゆみ

術後長期にわたってケアを要する脚延長術での退院後に向けての自主管理について、退院前から本人参加のもとに実地経験を重ね、さらにマニュアルを作成して、安心して在宅で後療法をおこなえるように支援したことを内容としたものである。対象は9歳女児で先天性大腿骨短縮症で、知的障害はなく、7cmの下肢長差に対して、大腿骨と下腿骨とを同時に延長し手いる。

マニュアルでは写真を中心にしたもので、支援内容を具体的記載し、注意点を判りやすくしている。退院後も安心して、生活を送りながら自主管理ができていて、この方法が有用であったとしている。